柔らかなまなざしで、どんな質問にも丁寧に言葉を選び、組み立てながら答えてくれる小池さん。音楽を始めたきっかけはどんなものだったのだろう。
「高校時代、友達と遊びでバンドをやったのが最初ですね。当時はボーカルとベースを担当。音楽に興味を持ったのは、音楽好きだった姉の影響もあります」
初めてアルバイトをしたのも高校時代で、バイト先に選んだのはファストフード店。高校に入って時間ができ「自由に使えるお金が欲しい」と思ったのが動機だそう。
「年上の人と話す、という経験そのものが新鮮でした。それまであまり年上の人と接する機会がなかったもので。バイト先では、自分のしたことが『店の評判』になってしまうでしょう。そんな感覚を体感したのは初めてのことで、その点にはある種、怖さのようなものも感じました」
そんな返答から伝わってくるのは、小池さんの責任感の強い性格に他ならない。稼いだお金は、主にCDや漫画、小説などに使ったという。ところがある時、バイト先の先輩が小池さんに思いがけない言葉をかけてきた…。
「叱られたとかそういう感じではなく、雑談のなかの軽い一言だったんですが『小池くんは、時間があるからとか、欲しいものがあるからとか、そんな理由で働いていると思うけど、私は生きるために働いているんだよ』って。今思うと当時の僕は真剣には働けていなくて、それを察しての一言だったんでしょうね。社会で働く人と自分との差を感じ、自分は未熟だったなと痛感します。申し訳ないことをしたと今も思い出すんです」