南幌のシンボルとして、家族でみんなで楽しむ風景を残し続けていきたい【寛ぎの宿 なんぽろ温泉ハート&ハート／笹川さん】

なんぽろ温泉ハート&ハートの支配人笹川幸貴則さんにご登場いただきました。「農家に生まれているので、春には緑、秋は黄金色になった稲の水田の風景が大好き」と、笹川さんにとっての南幌の魅力は田園風景だと言います。南幌高校を卒業し、サービス業であれば人に奉仕することを学べると考え、地元を離れ大型リゾートホテルに就職します。5年ほど勤めた後、南幌に戻り実家を手伝いながらオープンしたばかりの宿泊施設でも働き、徐々にホテルの仕事をする時間が多くなりました。「農家ってやっぱり大変で、両親はすごいなって尊敬しました」。地元で作られた作物が提供するお食事に使われていて、農家の方がすごく頑張っておいしいものを届けてくれていると教えてくれました。

温泉が開業した当初は町内外から年間30万人以上の入浴客が訪れました。開門前から人が並び、オープンと共に流れ込み休憩室の場所取りが行われました。洗い場も争奪戦、駐車場にも空きがないと毎日のようにクレームが寄せられました。「たくさんの人が利用してくれるからこその問題ってあるじゃないですか、そういうクレームは大丈夫なんです。それ以上に喜びの声もある」。声にならなくてもお客様の楽しんでいる様子を見られることが幸せです。お客様の本館と新館の両方の浴場に入りたいという声を受け、２つの露天風呂をつなぐ七色の回廊ができました。

現在は工事中のため全館休館となっています。改修後は日帰り棟に露天風呂と内風呂を集約します。老朽化した新館棟の露天風呂とラドン泉は撤去し、オートロウリュのサウナと水風呂が新設されます。レストランと休憩室もリニューアルします。コロナ禍に経費を見直し、これからも営業を続けていくための決断でした。温泉の管理が簡単になる循環再利用の設備に変えようという話も出ましたが「源泉そのままの温泉を浴槽に入れて、再利用しないかけ流しを続けてきた意味がなくなる」とあえて大変な方を選びました。管理された一定の温度ではなく、その日の天気や気温でお湯の温度が微妙に違うほうが自然で当たり前。「人の機嫌と同じ。自然を大目に見て、その日のお湯を楽しんでほしい」と笹川さんは言います。

昔から観光案内所に寄せられるような問い合わせも多くあり、南幌を訪れた方のために情報があったほうがいいと敷地内に観光情報を表示する大きなサイネージを設置しました。近年の南幌町は子育て支援が手厚いと若い世帯の移住が増えています。施設も家族で来て子どもと一緒に利用しやすいように考えています。自分が小さい時に遊んだ場所がいつまでもあると、年を経ても大好きな場所であり続けるように「絶対に残していきたい」と熱い思いを語ってくれました。

文・取材：三ツ井 瑞江／写真：岩崎晃和