「バイトを通じて得たもの」について聞くと、横山さんから返って来たのは即答の「ないね(笑)」。だがしばらく楽しそうに笑った後、横山さんは真顔でこう続けた。
「若いころの僕にとって、バイトというのは金のためにするもので、そこから何かを得よう、学ぼうと考えてしたものではなかったな。『俺、バイトだし』という甘えが心のどこかにあって、そのために得られなかったものはあったと思う。『PIZZA OF DEATH RECORDS』を立ち上げて自分が経営者になってからは、バイトの子たちには『うちの会社は人生道場だから』ってよく言うんです。色んな面白い考え方・生き方の人間がそろってるから、彼らを見ながらこの先どう生きていくかを考えてほしいって」
その言葉を聞いた松浦さんは、何度もうなずいた後、「僕はどのアルバイトも肉体労働だったんです。体を鍛えたいというのもあったし、時間の融通が利きやすくて。特に印象に残っているのは木材配送かな。大工さん相手の仕事なんですが、一人親方でやってる人が多かったんですよ。一匹狼で生活を背負う職人気質で。そういう人が言う言葉って、一言一言に重みがあるんですよね。特にあの名言が、って覚えているわけではないんだけど…。そうだ、『あいさつは大きな声で!基本だから』って言われましたね。ケンさん(横山さん)には『お前出来てないぞ!』ってまだ叱られるけど(笑)」と、若き日々の思い出を噛み締めるように語ってくれた。
そんな松浦さんが「バイトって、なんでこんなことしなきゃいけないんだって思っても、真面目にやってるとそこから見えてくるものがありますよね?」と横山さんに問いかけた。「だな!」と横山さんはこう答えてインタビューを締めくくった。
「なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだとか、こんなことして何になるんだって思うことってあると思う。でも、そういう時期も時間も人生には絶対必要なんだよね。理不尽に怒られることも含めて。人生経験にするぞってつもりで乗り切ってほしい、きっと後々生きてくることがあるはずだから!」
横山健(Vo./G.)が率いるソロプロジェクト。メンバーは横山とKenBand(Hidenori Minami〈G.〉、Jun Gray〈B.〉、松浦英治〈Dr.〉)の4人からなる。横山は1969年東京出身、1991年Hi-STANDARD結成、1999年にレーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」を設立し社長を務める。Ken Band結成は2004年。松浦の加入は2011年で、ドラマーとしてバンドを支える。
<インフォメーション>
●リリース情報 Ken Yokoyama 6thアルバム「Sentimental Trash」
PZCA-73 2,190円(税抜)