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バイトがあって今がある にしなさん

2026年5月18日 公開

勇気を出して踏み出した一歩一歩が、自分を形作ってくれるよ。

はかなく中毒性のある歌声とビターな世界観でさまざまなミュージシャンからのリスペクトも話題を呼ぶアーティスト、にしなさん。さまざまなアルバイトを経験してきた彼女が得たものとは。

カラオケで撮った動画でオーディションに合格!

ツアー中の北海道入りにもかかわらず、穏やかな笑顔で取材に応じてくれたにしなさん。楽曲のイメージそのままの、どこかシャイで飾らない雰囲気が印象的だ。
ご出身は東京都。小学校低学年のころ、偶然テレビに映った「コブクロ」の2人組の姿に、漠然と歌手へのあこがれを募らせた。とはいえ、子どものころから人前で歌うのが得意だったわけではない。音楽の授業で一人ずつ歌を発表する時間を、まるで地獄のように感じていたと言う。転機が訪れたのは高校2年生のころ。大手音楽レーベルが主催するアーティスト養成講座の告知を偶然SNSで見つけ、第一歩を踏み出したのだ。
「アーティストを育てるための短期的な講座で、事前には審査やオーディションを受ける必要があったんですが、当時はギターも弾けなくて、できることと言えば歌だけ。きちんとした録音や録画の仕方もよく分からないので、カラオケボックスで自撮りした動画を送り送り付けるっていう、今思えばなんとも素朴なやり方で応募しました(笑)」
結果は無事、合格。講座をきっかけに音楽を始め、弾き語りをベースに活動をスタートした。

長続きしなかった飲食店でのバイトの日々

初めてアルバイトをしたのは高校卒業を目前に控えたころ。甘味や和食のチェーン店のホール係を皮切りに、定食屋や居酒屋の調理担当などさまざまな店でのバイトを経験する。中でも印象に残っているのは日本酒が売りの創作和食居酒屋のキッチンだ。
「それまで勤めたチェーン店と違って料理がすごく独創的で…。なんかこう、畑をイメージした土にネギやニンジンが刺さってるような盛り付けとか、柔軟な対応力が求められたんです。『私は何を作っているんだろう…?』と、野菜を突き刺しながら『ちょっと違うな』みたいな(笑)」
どのバイトも長続きせず、いずれも半年ほどで辞めてしまっていたと言うにしなさん。その理由をこう分析する。
「機材を揃えたり、ライブハウスを借りたりするお金を稼ぐには必要ではあったんですけど、どうしても『この時間に歌えたらな…』という感情が勝ってしまって。その意味を問い始めて辞める、というパターンの繰り返しでした。何をやっても本当に向いてないって思ってたんですよね…」

創作と向き合う日々でバーのバイトが心の安定に

ライブハウスでの活動や動画投稿を経て現在のマネージャーと出会い、アーティスト「にしな」としての活動が本格的に動き出した。少しずつ知名度が上がる中で新たに挑んだのが、繁華街のバーでの仕事だ。
「カウンターだけの小さなお店です。さまざまなジェンダーの方から夜のお仕事で働く方、社長さんまで、本当にいろんな人が出入りするようなお店で、みなさんのお話を聞きながら日々『世の中ってこんなに多様なんだ』『いろんな気持ちや事情を持った人がいるんだ』って実感していました」
ここでのバイトは単なる小遣い稼ぎではなく、心の安定にもつながっていたと続ける。
「アーティストとしての『にしな』が前に出過ぎて、自分自身が分からなくなってしまう時期があったんです。活動の上でも、周りの目を意識しすぎて悩むことも多くて。でもバイトっていう『余白』を作ることでアーティストとしての自分から離れられ、心の均衡が保たれてたんですよね。お金を稼いで人の役に立つっていう行為にも、自分の存在意義を自然と見いだせるようになっていったように思います。その結果、焦っていた音楽活動にも心に余裕を持って楽しめるようになりました」
現在、にしなさんは約3年半ぶりにリリースのサードアルバム『日々散漫』を携えた全国ツアーの真っ最中だ。この作品を「変わっていく自分の日記のような存在」だと語る。
「これまでいろんな経験をした中でぎゅっと見えてきたものを書き記した作品です。21曲入っているので、どんなテンションの時でも寄り添ってくれる曲が一つはあるんじゃないかなと思ってます」
最後にアルキタ世代へ向けたメッセージを聞くと、それまでのリラックスした様子から一転、ハッキリとした口調でこう答えてくれた。
「駄目元でも第一歩を踏み出してみること、だと思います。私の場合は、受からないかもしれないけどオーディションに応募したり、失敗するかもしれないけどライブハウスに出てみたり。最初の一歩は確かにどれもすごく重たかったけど、『えいや』って踏み出したことが点と点でつながって、今の『にしな』を形作ってくれた。その意味では、いろんなバイトに挑戦したこともすべてが無駄じゃなかったんだなって、今振り返ると思うんです」

にしなさんの思い出バイト

甘味と和食のチェーン店
あんみつとか、抹茶スイーツとかを提供しているお店。初めてのバイトということもあって、ドキドキしながら働いてました。
定食屋のキッチン
無心で没頭できる仕事が好きで…ひたすらネギの輪切りをしていた記憶があります(笑)。お陰で今も野菜を切るのが好きです。
繁華街のバー
ゆるく長く、1年間ほど続けたバイト。いつも自分の知らない世界や感情を垣間見ることができて、新鮮な気持ちでした。

プロフィール

にしな
東京都出身のミュージシャン。高校2年生のころに弾き語りと作曲を始め、2020年10月から6カ月連続で楽曲をリリース。「SPACE SHOWER RETSUDEN NEW FORCE」やSpotifyのニューカマープレイリスト「RADAR:Early Noise 2021」に選ばれ注目を集める。2021年4月に1stアルバム「odds and ends」でワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。2022年7月には2ndアルバム「1999」を発表した。藤井風のサポートコーラスとして「Tiny Desk Concerts Japan」にもコーラスとして参加した。
オフィシャルサイト:https://nishina247.jp/profile/

インフォメーション

●最新リリース情報
3rd Full Album「日々散漫」

■すてき盤(初回生産限定)
[2CD]
WPCL-13739 5,700円(税込)
初回限定特殊仕様
■たっぷり盤(初回生産限定)
[2CD+ Blu-ray]
WPZL-32269 8,800円(税込)
初回限定特殊仕様
■おてごろ盤
[1CD]
WPCL-13738 2,500円(税込)

バイトがあって今がある

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