イタリア料理を通したかかわりとつながりを江別で紡いでいきたい【イタリア料理店 nikap／新田】

大麻新町に昨年11月にオープンしたイタリアンレストラン nikap（ニカプ）のシェフ新田裕也さんにご登場いただきました。新冠出身の新田さんは中学まで地元で過ごし、静内の高校に進学します。その後、先輩の話を聞いて面白そうだと思い札幌の専門学校で調理を学びます。実習やアルバイト先でかっこいい大人たちと出会い「その人たちに会っていなかったら飲食を続けていなかったかもしれません」と振り返ります。卒業後は東京や札幌のイタリアンレストランで修行し、24歳でイタリアに渡り郷土料理を学びました。

イタリア北部のレストラン3店で働き4年間を過ごします。最初はシェフに怒られても何を言われているか分からない状態。仕事が終わってから辞書で調べ、休みの日にはイタリア語のレッスンを受け、半年くらいで話せるようになってきました。「同僚と一緒においしいものを食べて飲んで、会話を楽しめる仲間がいるっていうのが人生の中で一番幸せな瞬間なんだなと感じたんです」。そういう空間や時間を提供することが自分の仕事なんだと改めて思ったそうです。1日にバスが1本しかないような田舎にも2つ星とか3つ星のレストランがあり、食事を楽しむためだけに1〜2時間もかけてお客様がやって来ます。「イタリア人の食に対する考え方ってすごいんです。人生の中の大事な楽しみの1つで、食べるほうも、作るほうも本気で向き合うんです」。イタリアで一緒に働いてきた人たちは、家族あっての仕事という考え方をし、仕事ばかりを優先にはしません。休憩もバカンスもしっかり取り、楽しみながら仕事をしています。日本に帰ってきた時、日本人は本当に働き過ぎだなと思ったそうです。

帰国し、札幌のテアトロ・ディ・マッサなど2店でシェフとして働きます。昨年、奥様の地元である江別で開業し、自分の店を持ちたいという夢をかなえました。奥様とはイタリアに行く前に知り合い、友人としてお付き合いがありましたがイタリアにいる間はずっと連絡を取っていなかったそう。「帰国することを親以外には言ってなかったのに、日本に戻ってきて札幌駅に着いた瞬間に偶然に彼女からメールが来たんです」。そこから交際が始まり結婚に至ったというお話しにはすてきな運命を感じました。

「イタリアではどこに行っても、自分の町や村が一番だっていう人たちばっかりなんですね。地元を愛して自分の仕事に誇りを持っている人たちはかっこいいなと思いました」。今後は、江別を愛する地元の人たちとつながって、イベントや子どもたちへ食育的なこともできたらいいなと、料理を通して江別を盛り上げていきたいと話してくれました。

文・取材：三ツ井瑞江／写真：岩崎晃和