暮らしに寄り添い、まちづくりに役立ち、心安らぐような読書環境をつくる【北海道ブックシェアリング／荒井さん】

読書環境の整備支援を進める一般社団法人北海道ブックシェアリング代表理事の荒井宏明さんにお話を伺いました。地域や収入、世代格差などによって本を読みたい気持ちが押しつぶされることがないようにと活動されています。2008年に読み終えた本の再活用から活動が始まり、東日本大震災の被害を受けた宮城と岩手県で1年半にわたり支援活動をしました。実験書店ブックバードを開店させ大麻銀座商店街に事務所を移転したのは2016年。現在は北海道学校図書館づくりサポートセンターとして、学校図書館のためにどんな本を収蔵すると良いかを、実際に手に取り相談することができる施設を運営しています。こうした取り組みや施設は他にはなく、学校関係者や図書にかかわる方が全国から足を運びます。

幼稚園のころに分からない文字を親や近所の上級生に教えてもらいながら、児童文学全集を読んだという荒井さん。小学生になるとずっと本を読んでばかりいるので親が病院に連れて行くと言い出しました。中高生になるとサッカーやギターにも関心を持ちご両親も安心したそうですが、そんな子どものころに好きだった駅舎や病院の待合室などにある文庫コーナーに本を入れる活動をしようと思ったのがきっかけでブックシェアリングを始めます。新聞に掲載されると本がすごく集まるようになったと共に本が欲しいという団体からの反響も多く「なんでだろうと思って調べたら、北海道の読書環境が全国で一番悪い」ことが分かりました。

「文部科学省が「読書活動の有無は学力に大きく影響する」としているにもかかわらず、日本では読書環境の整備に関する施策がなかなか進みません。日本の児童書は年々、充実しているのに、それを享受できる子とできない子がいるというのは大きな問題です。まちに図書館や書店がなくても法律違反とはなりませんが、学校図書館は学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であると法律で整備が決まっています。子どもが本を読みたいと思った時に本がないという状況を放置しているのは大人の責任です。図書館にある百科事典や辞書が昭和時代のもので内容が現在と合わない場合も多いのだとか。

江別には北海道立図書館も江別市情報図書館もあり、読書環境は大変恵まれています。大麻銀座商店街のブックストリートは100回目を迎えました。今後は商店街の各店舗が自由に軒先で手作りマーケットをやってくれることで、いろんなものが混じり合うイベントになり横幅が広がっていけば面白いと思い描いています。「せっかく江別という良いロケーションにいるので存分に本を楽しんでほしいですね」と荒井さん。江別から読書の素晴らしさをもっと発信していけたらいいなと思いました。

文・取材：三ツ井 瑞江／写真：岩崎晃和