対話力で人をつなぎ、新しい可能性を創造するニューリーダー【Ambitious Farm株式会社／柏村章夫さん】

地域密着型農業を営む農業法人Ambitious Farm（アンビシャスファーム）株式会社に行ってきました。代表取締役 柏村章夫（かしわむらあきお）さんは、山口県出身。サラリーマン家庭に育った3人兄弟の末っ子。自然と共に生きる職業にあこがれ、高校の修学旅行で来た北海道の星空に感動し、酪農学園大学に進学しました。「いずれ農業をしたい」という思いを抱きつつ、卒業後は商社に就職します。東京出張中に東日本大震災で被災して、改めて自分の思いに向き合い、農業を志し江別に戻り大学時代の友人と一緒に2014年にAmbitious Farm株式会社を設立しました。

アンビシャスファームでは、農業を通じて、食べる人と作る人を幸せにすることを目指し、自らも農業を楽しみ、次世代が魅力的に感じる農業を実践し、SNSなどで情報発信もしています。約100品種のこだわりの野菜を栽培しており、珍しい西洋野菜などを身近にし、親しみやすくしてくれるのは対面販売の「ふたりのマルシェ」です。野菜の特徴やお勧めの食べ方を教えてくれるので、リーキやピメントなどの初めて見る野菜も家庭の食卓に並べてみたくなります。これは「自分達が作った野菜を直接お客様に届けたい」という女性スタッフのアイデアを実現させたもの。柏村さんは農家を支えているのは女性であると考え、スタッフと対話を重ね、子育て中の女性も働きやすい環境を整えました。こうした取り組みからアンビシャスファームは「農業の未来をつくる
女性活躍経営体100選（WAP100）」に選ばれています。また、食の安全や環境保全、労務管理、人権保護に取り組む農場に与えられる認証「JーGAP」を取得しており、活動は外部からも評価され、昨年は北海道の生産者を消費者の視点から応援し表彰する第11回コープさっぽろ農業賞「農業奨励賞」を受賞されました。今年も都市型農業の先行事例として高く評価され「第17回HAL農業賞都市近郊農業賞」を受賞しました。

取組みや実践が注目される中、柏村さんは「今後はもっと泥臭い農業の本質を伝えていきたい」と考えています。自然と向き合う農業には、楽しいばかりではなく厳しい一面もあることは事実。その厳しさも知ってこそ、農業の本当の魅力が分かるのかもしれません。実際に農業体験を行う中でも「農業の本当を知りたい」という要望が多いのだそうです。

柏村さんは、2020年から3年間、中小企業家同友会江別地区の会長としても活躍していました。現在は、えべつ観光協会の副会長をされています。「江別にはローカルを楽しむことができる魅力がいろいろあります」。最近では江別の歴史にも興味がわいています。観光協会では、地域の人と企業や役所も含めた対話の場を作り、江別のことを思って行動していこうというメンバーづくりから始めています。柏村さんの力が農業だけにとどまらず、江別の新しい可能性も創造してくれそうですね！

文・取材：三ツ井瑞江／写真：岩崎晃和