豆腐の概念を越えたスイーツと昔ながらの豆腐で食卓に笑顔と健康を届ける【株式会社菊田食品】

江別市野幌町に昭和24年（1949年）菊田商品として創業し、日本の伝統食品である豆腐を70年以上造り続ける老舗メーカー株式会社菊田食品。1982年に現住所の錦町に移転した工場では、スーパーで流通する豆腐・油揚げ・こんにゃくなどの製品を作っていますが、2002年に若草町で開店した「とうふ工房菊の家」では、江別の大豆を使用して手造りにこだわった伝統製法の豆腐を造り続けています。

お話しをしてくれたのは、三代目社長の郷和樹（ごうかずき）さん。江別生まれ、江別育ちの郷さんは大学生のころには、菊田食品の工場でアルバイトをしていた経験もあり、今でも自らが豆腐の製造作業にかかわることがあります。「今日も朝4時から湯葉を作っていました。何でもやりますよ」と「社長の肩書きは、役割分担の一つだと思っている」とおっしゃいます。

「小麦の里」と言われるほど、江別は小麦が有名ですが、小麦は連作すると病気になりやすく、作物や土を良好に保つために植えられるのが「大豆」なのだそうです。2008年には、江別大豆プロジェクトが発足し、生産者と製造業者とが協力し地産地消を進めてきました。菊田食品では、江別産大豆を100％使用した【江別の大豆でつくった】シリーズを発売し、幅広く商品を展開しています。更に江別大豆の価値をより高めたいと取り組んでいるのが自家製スイーツの製造です。

郷さんは、豆腐や油揚げなどの従来の商品だけでは付加価値を付けづらいと感じ、お客様に喜んでもらうためには？と考えます。豆腐作りは豆乳作りから始まりますが、なかでも湯葉を作った後の豆乳は油分が取り除かれ甘くおいしいのだそう。そこで、江別の洋菓子メーカー「ベイクド・アルル」に協力を仰ぎ、豆乳ソフトクリームを開発し発売。このミックスをベースに豆腐を練り込んだ独自のクリームで豆乳シュークリームも発売。豆乳スイーツは評判となり新規のお客様の来店も増えたそうです。豆腐や豆乳をスイーツに生まれ変わらせることで、大豆を余すことなく使うことができると、スイーツを自社で手掛ける取り組みが本格的に始まりました。豆乳バスクチーズケーキや豆乳スフレケーキを開発し「菊の家スイーツ」として2021年4月より発売。昨年はマリトッツォを中心に展開しました。スイーツは冷凍で長期保存ができ、江別から全国や海外にも販売が可能です。最近では、道外からの注文も増えています。チーズケーキにティラミス、プリンケーキと新作も開発され、スイーツの試食が楽しいと新たな挑戦は従業員の方たちにも喜ばれているそうです。

菊田食品では、酪農大で研究用に栽培した大豆の研究に使われないものをきな粉やきなこねじりに加工し、学生による販売会で活用されています。また豆腐の残りかすを利用した肥料の研究にも協力しています。郷さんは「地域や社会に貢献できることをしていきたい」と更なる食の好循環を目指しています。

文・取材：三ツ井瑞江／写真：岩崎晃和