HYの故郷であり拠点でもある沖縄では、10月いっぱいが海水浴シーズン。7月リリースのニューアルバムも9月から始まった全国ツアーのライブも、南国の空気をまとったようにフレッシュな明るさに満ちている。この日、インタビューの場に現れた新里さんも、沖縄の青い空と海を思い起こさせるような爽やかさ。「僕ら5人、沖縄の素晴らしい大自然の中で育ちました。今もこれからも沖縄が拠点で、離れることは考えられないと思っています。もちろん北海道も大好きですよ。道が広くて、人が多くてもゴミゴミした感じが全くなく、住みやすそうな印象を受けます。遠くに山が見えるのもいいですね。特に雪を見るとテンションが上がるんですよ。いつかスキーをしに来てみたいと思ってます」と、にこやかに話し始めた。
沖縄で生まれ育ち、高校も海の近くだったという新里さん。最初のアルバイトは?という質問には「エビ養殖所のフジツボ落とし」という思わず身を乗り出したくなる答えが返って来た。「エビを養殖する大きな生けすがあるんですが、水を落として、壁にびっしり付いたフジツボをヘラで落としていくんですよ。炎天下、40人くらいの人たちとみんなで下半身海水につかって、結構な力仕事でしたね。シュン(名嘉俊さん)やユウヘイ(宮里悠平さん)も一緒。当時は同じ高校で、もうバンドを組んでたので。初めて通帳作って、そこに日当の4,000円を振り込んでもらった時はうれしかったなぁ。『やった!』って感じですよね。使い道? ギターのピックや弦を買いました」
何とも沖縄らしいアルバイトだが、実は〝フジツボ落とし〟なる作業自体は、新里さんにとって初めての体験ではなかった。お祖父さんが漁師だったため、子どものころから船の底に着いたフジツボを落とす手伝いは時々していたそうだ。「作業だけではなく、祖父にはとても大切なことを教わったんですよ。言われたことだけをするのではなく、自分から仕事を探して動くことが大切だ、って。自分の割り当てが終わったからといってすぐ休憩に入るのではなく、まだ終わっていない友達はいないか、手伝いを必要としている人はいないか、周囲を見渡してさっと動く。そういう男になれ、自分さえ良ければいいんじゃないぞって、よく言われました」
どんな仕事でも「やらされている」という意識ではなく、「自分だからこそ出来ることがあると信じ、楽しんで働くことの大切さをお祖父さんから教わり、アルバイトの場でも実践したと新里さんは言う。
「そしてそれは音楽でも同じ。〝やらされてる〟なんて思ってたら音楽は出来ないですよね。まずは音を楽しむことで、音がイキイキとした魂の通うものになってくると思うから」